青少年時代に学べば、壮年になって為すことがある。
壮年時代に学べば、老年に なって気力が衰えない。
老年時代に学べば、死んでもその人望は朽ちない。
掲句が言志四録1133条の中で最もメジャーな1句でしょう。
『言志四録』は、儒者:佐藤一斎先生の著書で全四巻1133条からなります。
最初の言志録は42歳から11年間で書かれたものであり、言志後録は57歳からの10年間、
言志晩録は67歳からの12年間、言志耋録は80歳からの2年間で執筆されました。
最後の言志耋録は340条ですから、全条の3割超を最晩年の2年間で書き上げたのですから、
そのパワーは凄まじいものがあります。
掲句の教えを80歳になってからも実践された一斎先生ですから、
青壮年期の学びの量が尋常ではなかったと想像します。
死後150年たった現代にも多くの ファンを惹きつけているその思想の魅力は、
人間学を学ぶ者にとっては手本中の手本にしなければなりませんが、
著書の教えと実践が見事に一致しているところ が、一斎先生の何とも素晴しいところです。
掲句は青年・壮年・老年のそれぞれの時代の学びを疎かにするなという教えです。
誰もが命を授かり少・青・壮・老を経て寿命が尽きます。
これが一般的な80年の一生ですが、結果としてそうなる可能性が多いかもしれませんが、
その人生途上に確実に天寿を全うできる保証はどこにもありません。
同年代の人の葬儀に出席しても、不思議と自分の順番だけはまだ先だろうと思うのが常です。
実はこの逃げの気持ちがある間は、残された日々の大切さが皮膚感覚で分かっていないのだろうと思います。
「臨終を想えば緩みなし」という句は、老いを自覚し始めた60歳になった直後の句ですが、
自分なりには秀作の句です。
若い頃は誰でも余命の日々の大切さを皮膚感覚で実感できないものですが、
できないからこそ掲句のような素晴しい教えを素直に受け入れて、
人生の早い段階から意識して「少・青・壮・老の学び」 が必要となります。
杉山厳海,名古屋大原学園学園長,東洋思想に学ぶ経営学,https://www.jmca.jp/column/ohara/genshi42.html より転載
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